「ネットワークメディアとグローバルコミュニケーション」1(1):日本語翻訳巻頭語と論文要旨
侯小天 黄雪遥 张雨珏 赵雨璐 陈昕 徐晨吉 施懿 李甜甜
1 オンラインメディアとグローバルコミュニケーション:グローバルな学術出版モデルの革新、コミュニケーション研究者のためのオリンピックイベントの構築へ
新しい学術誌が至る所ある中、別のコミュニケーションに関する学ジャーナルが本当に必要なのか?少なくとも、本誌『Online Media and Global Communication(OMGC)』(以下は「本誌」あるいは「OMGC」と略称する)に対して肯定する声がある。コミュニケーション学についてのジャーナルは数百類あり、2021年まで94誌が Web of Scienceに収録されている (https://www.bgsu.edu/arts-andsciences/media-and-communication/resources/ssci-communication-journalpublishing-guide)。使用言語という点から見れば、これらのジャーナルはいずれにしてもグローバルなものではない。そして、これらのジャーナルは、学術界の共通語である英語しか使わないか、そうでなければ、出版国の言語に限定される。英語とスペイン語のようなバイリンガルジャーナルはいくつかあるが、世界中の何十億もの人々が話す国連公用語、つまりアラビア語、中国語、英語、フランス語、ロシア語、スペイン語を全部含めたジャーナルはない。本誌は言語の壁を越え、構造化フレームにおける六カ国の言語の要旨を提供し、公開発表された研究を非英語圏の読者たちも読まれ、各種の機械翻訳エンジンを通じて翻訳できることを目指す。また、本誌はグローバルな学術出版の革新的なモデルを提供することに力を注ぐ。
2022年冬季オリンピックは中国で開催されたが、アスリートと同様に、学者諸氏が国籍を問わず、世界的に開放された場所において、卓越性を競い合う場所になることをOMGC派目指す。世界中の学者がオンラインメディアとグローバルコミュニケーションに関する新たな理論、方法及び研究を共有する場プラットフォームになることが目標である。中国の上海外国語大学新聞伝播学院及び中国国際世論研究センターからの多大な支援を受け、著者と読者双方に対するフリーアクセスのモデルでサービスを提供することが実現された。また、上海外国語大学は資金やスタッフの援助だけでなく、本誌に多数の翻訳人材を派遣している。本誌の提携出版社として、De Gruyter社は273年の歴史を持つドイツの学術出版社である上、編集チームと編集委員会には、26カ国からなる男性22名、女性15名の名高い研究者が集まっている(詳細は本誌のサイトを参照https://www.degruyter.com/journal/key/omgc/html)。
本誌は二つのウェブサイトがある。公式サイト (https://www.degruyter.com/journal/key/omgc/html)をDe Gruyter社が運営し、本誌に関連する論文や標準規定に焦点を当てている。上海外国語大学が担当するサイト (http://omgc.shisu.edu.cn/12332/list.htm) では、本誌に関するニュースや、組織イベントなどが紹介されている。例えば、2022年3月12日に開催された「誤情報とグローバルコミュニケーションシンポジウム(Misnformation and Global Communication Symposium)」について、本サイトで詳しく紹介されている。このほか、このサイトには世界中の学者の方々のために、グローバルコミュニケーションに関する研究資源を提供致する。
ソーシャルメディア、ブログ、モバイルアプリ、ポッドキャスト、メッセージングアプリ、ビデオ・ストリーミングサイトなどグローバル・オンラインメディアの発展につれ、われわれはこれらのメデイアが世界に与える影響への理解を一層深める必要がある。グローバルコミュニケーションの分野はなおさらである。コンピュータやビッグデータ技術のおかげで、全世界におけるオンラインメディア研究が急速に拡充されている。検索エンジン、パイソン(Python)プログラミング、機械学習によって、研究者は自国や他国の膨大なオンラインメディアデータを簡単に収集し、分析できるようになった。そして、オンライン調査ソフトや国際調査チームサービスも国際調査に大きく役立っている。
OMGCは高品質、革新的かつオリジナルな研究成果を発表することに取り込み、とりわけFacebook、TikTok、YouTube、Twitter、Instagram、WhatsApp、Weibo、WeChat、Wikipedia、ウェブサイト、ブログなどのグローバル・オンラインメディアの利用に力を注いでいる。そして、本誌はオンラインメディアやグローバルコミュニケーションの実践(とくに途上国の場合)に基づいた理論的な貢献の実現を期待している。また、本誌は、近代的なコミュニケーションの問題に着目し、グローバル・デジタルメディア・プラットフォームが国際関係、国際世論、フェイクニュースやプロパガンダの拡散、社会変化、消費者行動、国際発言におけるバランスに与える影響及び働く機能に重きを置く。今後、世界都市がグローバルコミュニケーションの主導的な「メディア」プラットフォームを構成することを踏まえ、ユネスコが提唱するグローバル・スマートシティの発展に関連するグローバルシティ・コミュニケーションにも着眼する。
本誌は、オンライン·オフラインメディアにおける国家間グローバルコミュニケーション発信の理論やアプローチ、オンライン·オフラインメディアの比較など主要な研究テーマを取り扱い、特に国際比較研究を歓迎する。また、国際影響力の持つオンラインメディアに焦点を当てる単一国の研究も対象とする。一方で、概念的な研究よりも、実証的な研究をより高く評価し、記述的研究(Descriptive Study)では抽出されるサンプルが全国的な人口学的特徴を代表する構成と相当数の規模であれば、受理する。
原著論文のほか、OMGCは非英語圏の国·地域におけるオンラインメディアやグローバルコミュニケーション研究の動向及び発展に関する論説も毎号掲載する予定である。また、非英文のコミュニケーション学術誌に掲載され、本誌の趣旨に見合った「途上国の宝物」とされる研究の翻訳も掲載する。
本誌は「Dual Track Review」の査読制を導入する。この制度は、筆者が知る限り、コミュニケーション分野において史上初であろう。原稿を投稿する前に、著者は1)「Double-Blind Review」(著者に対し、査読者に対しても匿名性を確保)、と2)「Single-Blind Review」(匿名性は著者に対してのみ)の二つの査読方法を筆者が選択できる。ただし、もしも関連論文を他誌に掲載されているまたは早期公開されている場合、および自己引用を5回以上行った場合、「Single-Blind Review」が適用される。このシステムにより、高水準の査読者を最大限に確保するとともに、著者がそれぞれの状況に応じて最適な査読方法を選択することができる。これに関連しては、「Dual Track Review」の利点を議論した次の記事を参照:Peer Review Week(https://blog.degruyter.com/fact-or-fake-the-question-of-anonymity-inpeer-review/)およびJournalism and Mass Communication Quarterly(JMCQ)(https://journals.sagepub.com/doi/full/10.1177/1077699020904383)。
本誌は人名について文化差があることを認識し、特に特定の姓名が人口の多数によって共有される文化では、著者の姓名と名の頭文字だけでは複数の人物が同一であるかのような印象を与えてしまう。このため、本誌では独自の引用文献の書き方を採用し、APA著者のフルネームを記載する。もちろん、論文の内容が採否の決定に最も重視されるが、本誌への投稿者にはこうした異なる引用方式を認識し、理解を賜りたい。投稿に関するガイドは、同誌のウェブサイトが確認でき、投稿のプラットフォームはScholarOne(https://mc.manuscriptcentral.com/omgc)である。
今号の論文のガイド
この創刊号では、本誌がどのように機能しているかを示すとともに、論文の種類の多様性を反映した4本の優れた研究論文を掲載した。2編は単盲検の査読付き論文で、もう二つは、は二重盲検の査読付き論文である。最初の論文は、Jörg Matthesの「ソーシャルメディアと若者の政治参加:政治参加の促進と注意散漫の間で」。本稿では、アメリカ、ドイツ、スイス、日本の若年層の投票率とソーシャルメディアの利用状況を縦断的に集計し、ソーシャルメディアの利用がいかに政治的関与を著しく低下させるかを比較した。ほとんどの若年層は、主に非政治的な目的でソーシャルメディアを利用してる。政治参加を促すというよりは、むしろソーシャルメディアは彼らの気をそらすことになる。
Shahira Fahmy、Basma Mostafa TahaとHasan Karademirの論文「ツイッターにおけるジャーナリズムの実践:ソーシャルメディアにおけるパーソナライズされた紛争報道のビジュアル比較研究」は、イラン、カタール、サウジアラビア、米国のニュースメディアで働くジャーナリストたちのTwitterアカウントにおける視覚的フレーミングのパターンを調べることによって、論争の的になっているイエメン内戦の報道をどのように個人化しているかを示した。さらに、個人レベルの要因(ジャーナリストの母国または外国人としてのアイデンティティ)と組織レベルの要因(紛争に直接または間接的に関与している報道機関の所属国)が、Twitterプラットフォームで共有される画像に及ぼす影響についても検討した。その結果、ジャーナリストは紛争を報道する際、個人的な報道をすることもあるが、ほとんどが中立的なスタンスをとることを好むという結論に達した。
蔡金禧(Sherwin Chua)とOscar Westlundの論文「プラットフォーム構成:レガシーニュース出版社のプラットフォームイノベーション慣行における概念化と縦断研究」は、シンガポールのレガシーニュース出版社を対象に、グローバル・プラットフォーム企業がジャーナリズムを支配するようになる中で、出版社がどのように自らの実践を革新しているかについて、縦断的・質的ケーススタディを行ったものである。彼らは、ニュース制作の6つの段階におけるイノベーションを分析する際に、概念的な枠組みとしてプラットフォーム構成を提示した。
胡雪晨(Xuechen Hu)、高行健(Xingjian Gao)、徐文臻(Wenzhen Xu)と高井次郎(Jiro Takai)の論文「COVID-19予防行動の予測要因としてのメディア接触とリスク認知:計画的行動理論(TPB)による日米比較検討」では、計画行動理論(TPB)に基づくモデルを米国人と日本人を対象に検証し、COVID-19に対する予防行動の実行に影響を与える心理・社会的要因を比較検討した。その結果、SNSの関与は日本人のCOVID-19に対する態度にのみ影響を与え、米国人のCOVID-19に対する態度には影響を与えないことを判明した。
今回の招待論文は、胡泳(Yong Hu)と陈磊 (Lei Chen)による、中国の4つのコミュニケーションコアジャーナルに掲載されたインターネットベースのコミュニケーション研究についての総説論文である。1994年以降の研究の成長と5つの主要分野における成果をたどり、不足を反省した。オンラインコミュニケーション研究を、コミュニケーションと人間との根本的な関係の研究に立ち戻ることを呼びかけている。
この創刊号を締めくくるのは、「発展途上国からの宝石」である。2020年ブラジルのジャーナル『Revista Fronteiras - estudos midiáticos』にポルトガル語で掲載されたThaiane Oliveiraの論文を、著者とジャーナル方面の許可を得て翻訳した。タイトルは、「認知危機の時代における科学に関する偽情報:ソーシャルメディアでの陰謀論の広がり」である。この研究もCOVID-19と関連し、ネットワーク分析と参与観察を通して、ブラジルの WhatsApp、FacebookとYouTubeで陰謀論がどのように広がるのを研究した。結論は、科学と政府・産業界との関係に不信感があっても、科学的権威は、科学に関する陰謀論を流通させる上で極めて重要な象徴的資本である。
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Louisa Ha,創刊編集長
ボーリング・グリーン州立大学 リサーチエクセレンス教授
2 ソーシャルメディアと若者の政治参加:政治参加の促進と注意散漫の間で
著者:Jörg Matthes
https://doi.org/10.1515/omgc-2022-0006
キーワード: ソーシャルメディア、投票率、政治参加、娯楽、気晴らし、選挙、多国間比較
研究目的
研究者たちは、ソーシャルメディアが若者の民主的参加を促進する能力に大きな期待を寄せている。しかし、関連する研究の大部分は、ソーシャルメディアの非政治的で娯楽的な利用をほとんど無視した。本稿では、ソーシャルメディアの利用が政治参加の大きな阻害要因になりうることを論じる。なぜなら、若年層は主に非政治的な目的でソーシャルメディアを利用しているからだ。これは動員するよりもむしろ注意をそらそうとする。
デザイン/方法論/アプローチ
著者は、アメリカ、ドイツ、スイス、日本の4カ国の集計データを用いて、若者のソーシャルメディア利用データと投票率の相関関係を比較し、この点について論証する。
研究結果
データは、これらの国々におけるソーシャルメディア政治参加のパラドックスと呼ばれるものを示唆している。ソーシャルメディアが急増しているにもかかわらず、そしてソーシャルメディアの利用はオフラインでの政治参加を促進するという圧倒的な研究証拠があり、若年層と高齢層の投票率の差は大きく縮まっていない。
研究の意義
ソーシャルメディアが世界の民主主義に与える影響を理解しようとする場合、エンターテインメント志向のコンテンツを持ち込む必要がある。
オリジナリティ
本論文は、ソーシャルメディアの利用と政治参加に関する支配的な研究パラダイムに挑戦するものである。今後の研究において、ソーシャル・メディアの利用がどのように政治参加に結びつくのかについて、理論的に発展させ、記述し、実証的に検証することを強く求めている。メディアの使用は、動員する可能性と注意をそらす可能性を持っている。
3 ツイッターにおけるジャーナリズムの実践:ソーシャルメディアにおけるパーソナライズされた紛争報道のビジュアル比較研究
著者:Shahira Fahmy, Basma Mostafa Taha and Hasan Karademir
https://doi.org/10.1515/omgc-2022-0008
キーワード:パーソナライズド・ジャーナリズム、ビジュアル・コミュニケーション、ソーシャルメディア(広義)、イエメン、内容分析、紛争報道、ツイッター、ビジュアル・フレーミング
研究目的
本論文では、ツイッターの視覚的な枠組みを検討することによって、論争のあるイエメン内戦に対するジャーナリストのパーソナライズされた報道のあり方を解読する比較研究である。さらに、ツイッターでの画像共有に対して個人レベルの要因((ジャーナリストの母国や外国人の身分なと)や組織レベルの要因(報道機関が紛争に直接・間接的に関与している国に属するなと。)がどのように影響しているかも検討した。
デザイン/方法論/アプローチ
2880件の画像ツイートを内容分析や記号論的分析することで、ツイッターにおける紛争に関連するさまざまな視覚的なナラティブやジャーナリズムのパーソナライズ度合いを探る。
研究結果
内容分析の結果、ジャーナリストは個性的な報道をすることもあったが、全体的に、紛争を報道する際には中立的な立場を取る傾向があることがわかった。記号論的分析の結果、より広い範囲で、分析した画像ツイートが古典的な「戦争は悲劇である」というナラティブを強調すると同時に、政治的衝突を解釈することを示した。
実践的意義
本研究では、ソーシャルメディアにおけるジャーナリズムの実践と、ツイッターにおける紛争の個人化されたジャーナリズムの程度と役割についてより深い理解を得ることができる。
社会的意義
本研究では、ツイッターでのジャーナリストの役割の揺らぎを捉えた。ジャーナリストは、中立的な観察者であることと道徳的な代理人であることの間で、ビジュアル役割が変動することがある。このような変動は、ジャーナリストの母国や外国人としてのアイデンティティ、所属する報道機関の所属国など、さまざまな要因に影響されていると思われる。
オリジナリティ/価値
本研究で初めて明らかになったのは、様々な背景を持つジャーナリストが、ツイッターでもある程度ジャーナリストとしての役割を遂行することに何らかの義務感を持ち続けてきたことを示すことである。また、ソーシャルメディア上のパーソナライズされた戦争報道が受ける異なる程度の影響についても明らかにしており、影響力の階層モデル(Shoemaker, Pamela & Stephen Reese. 1996. Mediating the Message; Theories of influence on mass media content. New York: Longman)をツイッター上のパーソナライズされた文脈に適用した。したがって、このモデルがオンラインファーストの時代、特に非西洋的の文脈においてどのように展開されるかについて、本研究は新たな貢献をもたらした。
4 プラットフォーム構成:レガシーニュース出版社のプラットフォームイノベーション慣行における概念化と縦断研究
著者:蔡金禧 (Sherwin Chua) and Oscar Westlund
https://doi.org/10.1515/omgc-2022-0003
キーワード: デジタルジャーナリズム、イノベーション、プラットフォーム、実践的理論、出版社、定性調査、シンガポール、ソーシャルメディア
目的
出版社は、グローバルプラットフォーム会社のニュース業界に対する主導的地位がますます高まっていることに直面し、慣行を革新している。本研究では、ニュース制作の6つの段階にわたり、出版社がサードパーティプラットフォームの編集活動をどのように革新するかを調べる。そのため、本稿ではプラットフォーム構成という概念をフレーミングとして導入し、説明する。
デザイン・方法論・アプローチ
本研究は混合研究法の質的アプローチを用いて、シンガポールのあるレガシーニュース出版社をケースとして5年間にわたる縦断的追跡を行った。調査には、35人の従業員への詳細なインタビュー、ニュースルームの観察、および出版社のウェブサイトとアプリの追跡が含まれている。
調査結果
本研究では、出版社のプラットフォーム構成に関する3つの調査結果を提出した。まずは多方向性である。出版社は、プラットフォーム機能の利用(プラットフォームの可視性の提示)とプラットフォーム依存の削減(プラットフォームの逆バランス)のバランスを同時に確立する。第二は特異性である。出版社は、ニュース制作の6つの段階に関して、編集指向の活動を追加、削除、および/または変更する。第三は投資である。出版社はその専門活動への投資においても、プラットフォームのプレゼンスと依存を減少することの逆バランス指向を示している。
実用的な意義
本稿は·プラットフォーム配置マトリックスを導入し、出版社がプラットフォーム構成に取り組む方法と理由を分類して、説明する。
理論的および社会的重要性
プラットフォームの構成という概念は、出版社とプラットフォームの関係に関する研究に使用でき、出版社とプラットフォームの関係に関する研究の理論構築を推進する。 プラットフォームの配置は出版社の革新実践に対する調和を理解し、より広範なニュースと経済的利益を目指して戦略を策定し、ニュース活動への投資をプラットフォームと結びつけることに役立つ。
独創性/価値
本研究は、出版社のイノベーション慣行に関して初めてプラットフォーム構成の概念を導入して解釈する研究である。出版社とプラットフォームの相互作用の研究では、プラットフォーム構成の概念とマトリックスは、将来の縦断研究または短期研究の分類と操作に役立つ。
5 COVID-19予防行動の予測要因としてのメディア接触とリスク認知:計画的行動理論(TPB)による日米比較検討
著者:胡雪春、高行健、徐文臻、高井次郎
https://doi.org/10.1515/omgc-2022-0002
キーワード:メディア接触、SNS関与、計画的行動理論(TPB)、衛生観、リスク認知、予防行動、日米比較、オンライン調査
目的
本研究では、計画的行動理論(TPB)にもとづき、新型コロナウイルス感染予防行動の実行に影響を与える心理的および社会的要因を検討した。TPBモデルにはメディア接触とSNS関与を含み、新型コロナウイルスの対応が大きく異なる2つの社会、日本とアメリカを対象にし、モデルの有用性を確認した。
方法
日本と米国において、オンライン調査を実施し、それぞれ300名のデータを収集した。
結果
メディア接触は、両文化ともリスク認識の主要な予測因子であったが、SNS関与は日本人のみ予防行動の意図を予測した。さらに、個人の衛生状況も日本人のみの予防行動の重要な予測因子であることが判明した。
考察
予防行動に影響を与える変数に違いはあるものの、全体として、本研究のTPBモデルは両文化間で妥当であることが確認された。新型コロナウイルス感染予防行動の態度に関し、本研究では厳格な文化である日本と寛容な文化である米国の間に大きな差があることも判明し、こうした結果について議論した。
6中国インターネットコミュニケーション研究概要
著者:胡泳(Yong Hu)陳磊(Lei Chen)
htps://doi.org/10.1515/omgc-2022-0009
キーワード:インターネットコミュニケーション、中国インターネット、デジタルメディア、文献計量学
中国が1994年に国際インターネットに正式にアクセスして以来、インターネットの伝播は次第に中国社会内、さらには中国と国際間の交流の主導的形態になってきた。インターネットその中国への影響を理解することは、現在の中国とその世界との関係を理解する鍵であるだけでなく、コミュニケーション学関連のクラシックな議題を強力に補完するものでもある。本文は中国のインターネット研究の発展過程を整理した上で、五つの重点領域についての成果を整理し、不足などについて反省を展開し、さらに将来の研究について提案した。
7 認知危機の時代における科学に関する偽情報:ソーシャルメディアでの陰謀論の広がり
著者:Thaiane Oliveira
翻訳者:王梓君 (Zijun Wang)、徐景新 (Jingxin Xu)
キーワード:陰謀論、科学、ソーシャルメディア
ソーシャルメディアで広まっている科学に関する偽情報は、世界的な関心の中心になっている。 特に危機の時代には、科学研究機関を含む世界的な知識生産と真実追求機関の信頼性と正当性が社会から疑問視されている。 このことを念頭に置いて、この研究は、ブラジルで広まっている最も一般的な陰謀理論を追跡し、さまざまなデジタルプラットフォームでの行動者、談話システム、およびそれらの相互作用を特定することを目的としている。混合調査方法を使用して、Facebook、WhatsApp、およびYouTubeの陰謀論サポーターの情報フローを分析する。科学、政府、産業界の関係に対する国民の不信にもかかわらず、科学当局は依然として科学関連の陰謀論情報の普及において非常に重要な象徴的な役割を果たしていることがわかった。