「ネットワークメディアとグローバルコミュニケーション」1(2):日本語翻訳巻頭語と論文要旨

发布者:李晓蒙发布时间:2022-08-04浏览次数:91

「ネットワークメディアとグローバルコミュニケーション」1(2):日本語翻訳巻頭語と論文要旨

訳者:林彬(リン ヒン)張雨珏(チョウ ウカク)、趙雨璐 (チョウ ウロ)、侯小天(コウ ショウテン)、施懿(シ イ)、徐晨吉(ジョ シンキツ)、 陳昕(チン キン)李甜甜(リテンテン)、 黄雪遥(コウ セツヨウ



エディトリアルエッセイ

Global Content Creation and Consumption Transformation by Short Video Apps

ショートビデオアプリによるグローバルコンテンツの作成と消費活動の変革

Louisa Ha

https://doi.org/10.1515/omgc-2022-0044

 

TikTokをはじめとするショートビデオアプリの台頭により、人々が自己アピールを図るようになり、世界中の他の文化を学ぶ様式も変わりつつある。 2021年、TikTokの月間アクティブユーザー数は12億人、中国版であるDouyinでは6億人に達し(Iqbal2022、その使用時間も、オンライン動画サービスの王者と言われるYouTubeを上回った(Garvey2021)という。 オンライン動画は、コンピュータプラットフォームをベースとしたウェブキャスティング(Ha & Ganahl, 2007)から、スマートフォンなどのモバイル機械をベースとしたいつでもアクセスできるショートビデオアプリへと変貌を遂げた。一方、ショートビデオは、積極的なインターネット利用をアルゴリズムの推薦による受動的な継続消費に変えたと同時に、模倣ビデオ、チャレンジ、BGM提供、コメントを通じてアクティブな共有と作成を促した。また、これらのショートビデオアプリでの15秒から3分間のショートビデオは、1996以降生まれ、集中力の持続時間が極端に短いとされるZ世代にも大いに人気を呼んだ。ショートビデオアプリのユーザーの大多数は若者であるため、これらのビデオが彼らのアイデンティティや行動に与える影響を検討することが重要である。 ビデオを作成したり、共有したるするのが簡単にできるため、これらのショートビデオアプリは、誤った情報と有用な情報の両方にとって肥沃な土壌にもなっているといえる。ゆえに、この重要な短いビデオア現象の研究を促進するために、本誌の特集として、TikTokをはじめとするショートビデオアプリとグローバルコミュニケーション(TikTok, Short Video Apps and Global Communication)を発行する。この特集では、ショートビデオアプリの性質と影響を調べるの革新的な原著研究論文5本とショートビデオアプリの発展と将来に関するレビューエッセイ1本を掲載することにする。

 

研究論文のハイライト

本特集では、Wei TaoXiaohong Wangの共同執筆による「ショートムービー研究の歴史的考察と理論的マッピング (2005-2021)」を、招待レビューエッセイとして最初に掲載している。彼らは、メディア、経済、文化と言説の観点から、2005年から2021年にかけてWebofScienceChinaSocialScienceおよび ScienceCitationIndexedに掲載された中国語と英語のショートビデオに関する研究をレビューした。彼らは、中国語の雑誌が英語の雑誌よりもはるかに多くのショートビデオ研究を掲載し、英語の雑誌とは異なるトピックに焦点を当てており、研究者に興味深い研究課題を提供していると発見した。

 

本特集では、代表的研究成果として、Shahira FahmyLaila AbbasSherry Ayad、 Mirna IbrahimAliAbdelmoneimによる「ティックトック(TikTok)における蜂起:若者のソーシャルメディア行動主義についての考察」を紹介している。 2021年にシェイクジャラで起こり、今でも進行中のイスラエル・パレスチナの紛争を反映したTikTokショートビデオ203本を対象に研究し、ビデオ作成者らはTikTokビデオがおもしろい政治活動として機能し、「TikTokインティファーダ」を通じて紛争の中で取り残されたパレスチナ人に対する国際的支援を集めることに成功したことを示した。TikTok インティファーダで使用されたアフォーダンスは、可視性、編集性、関連性、および持続性であったとまとめた。

 

Arthur D. Soto-Vasquezの「他者を知るためのプラットフォームとしてのYouTubeTikTok上海ディズニーランドにおける非中国人観光客の旅行動画を例に」では、定性分析アプローチを用いて、YouTubeTikTokという2つのオンラインビデオプラットフォームを比較した。Soto-Vasquezは、上海ディズニーランドのビデオをケーススタディとして、TikTokでは、ショートビデオ中心の運営形式によってユーザーの経験増幅や自己表現を促進するのに対して、一方、YouTubeでは、長いビデオ中心の運営形式によって、外向きの視線を使い、ビデオ制作者の他者への観察を記録しているということを指摘している。また、欧米のユーザーがソーシャルメディアに投稿する旅の記録は、地元の人や地域を外部化し、不用意に植民地的なトロフィーを再生産してしまうことを批評している。 当研究はファンダム研究に貢献するとともに、旅行ビデオの重要性を示すものでもある。

 

楊洋(Yang Yang)の「ティックトック(ドウイン)及びそのインフルエンサーによる利用状況に基づく異文化比較:中米ユーザーの利用状況を手がかりに」は、米国のTikTokユーザーと中国のDouyinーザーを直接比較したものである。予想されるホフステードの文化的価値次元に反して、Douyinの中国人ユーザーはTikTokの米国人ユーザーよりも個人主義が高く、権力距離のスコアが低いという文化的パラドックスを発見した。中国と米国のユーザーは、インフルエンサーの専門知識において異なる好みを示している。 さらに、米国の利用者はTikTokでの交流を好み、その多くが中国の利用者よりもフォロワーが多く、中国の参加者はDoyinのヘビーユーザーであり、米国のユーザーよりも購入時のインフルエンサービデオに影響されやすいことがわかった。

 

Anthony FungMilan IsmangilWei HeShule Caoの「ライブ=金儲けの唯一王道:ティックトックの参加者関係とプラットフォーム時間」は、Douyinのトップクリエイター(インフルエンサー)50人にインタビューし、 ショートビデオクリエーターの行動形式を明らかにした。クリエイターたちは、自由で独立した働くことを楽しむ一方で、視聴者との関係を維持することに心配りし、視聴者とフォロワーを常に確保するためにプラットフォームに多くの時間を費やしている。視聴者との接触は、真のインタラクションではなく、プラットフォームが提供する分析に抽象化されている。クリエイターは解放されるのではなく、プラットフォームの制約の中で自由の可能性を提供する新しい形の時間によって制限されている。

 

オンラインビデオによって力を与えることができるもう一つの疎外されたグループは地方の女性です。 LiZhiZhuHuijie の研究「オンライン・イメージと自己呈示:中国農村の女性ビデオブロガーに関する研究」では、定量的および定性的な内容分析を通して、全国サンプルとして数多くのフォロワーを持つ30人の農村女性vloggerを対象に調査していた。農村専用のカテゴリが設けてある西瓜(Xiguaビデオでは、これらの女性のvloggerが大いに活躍している。ジェンダー理論に基づき、著者はこれらのvloggerの画像形成は依然として男性や家父長制社会秩序の視線にさらされており、彼らのvlogは農地での日常生活、農業生産、子育てを特徴としていることを発見した。

 

この5つの原著論文とレビューエッセイに加えて、ハンガリーにおけるオンラインメディアとグローバルコミュニケーション研究に関するレビューエッセイと、世界南方研究の宝石としてのサウジの子供たちへのYouTubeビデオの影響に関する翻訳論文もある。Gergő Háló のエッセイは、ハンガリーでのオンラインメディア調査を概要し、デジタルデバイドと不平等、情報社会への批判が共通のテーマであることを明らかにした。社会主義と社会主義後の歴史的発展要素に起因する多数の外部要因が、イデオロギーの分離、経済の発展遅れ、研究の資金不足、言語の壁など、今日のハンガリーの学術分野に影響を与えることが指摘された。

 

世界の南方研究の代表的な成果として、AfnanQutubAlaaMuhammadの研究「生活満足度の観点から見たYouTubeチャンネル『Mushaya's Channel』の利用によるサウジアラビアの子供たちの社会化プロセスへの影響」は、サウジアラビアで5歳から13歳の子供を持つ母親353人を対象とする調査研究であり、YouTubeのコンテンツがケース中での子供に与える悪影響を説明するものである。研究によると、サウジアラビアは、一人あたりのYouTube使用率が世界で最も高い国である(Hamden&Hundel2019)とされる中、アラビア語で最も人気のあるコメディチャンネルである「モシャヤ・ファミリー」の子供視聴者の母親のほとんどが、これらの番組が子どもたちの悪戯を煽り、子どもたちの購買意欲を刺激するものだと考えて、自分の子供がこのような番組を見るのを好まないということを明らかにした。

 

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1. A Historical Review and Theoretical Mapping on Short Video Studies 2005-2021

ショートムービー研究の歴史的考察と理論的マッピング (2005-2021

著者: Wei TaoXiaohong Wang

https://doi.org/10.1515/omgc-2022-0040

 

要旨:TikTokの人気向上に伴い、世界においてショートムービー研究ブームを引き起こした。一方、中国ではショートムービープラットフォームの市場はすでに成熟しており、多くの研究論文が発表されている。しかし、ショートムービー研究の全体的なレビューがまだできていないと言える。サイエンスマッピングとテーマ分析の研究方法で、本研究では過去20年間のWeb of Science Core CollectionCNKICSSCICSCD)の研究・レビュー論文を検討し、要約した。その結果、主に以下のことが分かった。1)ショートムービー研究の発展には主に4つの段階があり、それぞれが市場の成長と緊密に関連している。2ショートムービー研究には、4つの主要な視点(メディア、経済、文化、言説)と12の中核的な問題にまとめられるが、ショートムービーが普通の人々にもたらす可視性は多くの研究の基本的な視点となっている。3)現在、ショートムービー研究はより広く、より深くなっており、異なる学術的背景を持つ学者を惹きつけ、複数の方法が研究に適用されている。4WoSCNKIの論文は、いくつかの類似性を持っているが、研究課題、対象、方法においてより多くの違いを見せている。更に、本研究では今までの研究の限界と今後の研究の可能性も指摘した。

 

キーワード:ショートビデオ、TikTok、動画プラットフォーム、動画共有、映像文化

 

 

2. TikTok Intifada: Analyzing social media Activism among youth

ティックトック(TikTok)における蜂起:若者のソーシャルメディア行動主義についての考察

著者:Fahmy, Shahira (proxy) (contact); Abbas, Laila; Ayad, Sherry; Ibrahim, Mirna; Ali, Abdelmoneim

https://doi.org/10.1515/omgc-2022-0014

要旨:

研究目的

本研究は新興メディアのティックトックを手がからに、オンライ行動主義(Online Activism)に関する研究に貢献することを目的とするものであり、若者におけるゲーム的政治参与に関する新たな知識体系を検討した上で、創造的なマイクロビデオがどのように、社会と政治の発展に推進力や課題などを提供しているかを考察しようとするものである。

 

研究方法

本研究では、2021年にシェイク・ジャッラーで起きたイスラエル・パレスチナ紛争を反映した203本のティックトック動画を対象にコンテンツ分析を通して、TikTokというプラットフォームのアフォーダンスを明らかにしたい。その上で、シェイク・ジャラ事件の間、ネットユーザーの投稿やパレスチナ人への応援に現れている行動主義について検討を進める。

 

研究結果

本研究では、ティックトックが直接的にも間接的にも政治的コンテントの伝播と創造における促進力を働き、ユーザに政治事件に関する意見が述べられ、大衆に呼びかけ、オンライン行事が行われる場所を提供してきたことを明らかにした。さらに、ティックトックでは、特に「蜂起」期間において、論争が可視性、編集上の可能性、また、関連性と持久力を持っていることも明らかにし、そして、二つのもっとも際立っているポイントとして、一つは事件の宣伝に生かしたラベルで、もう一つは直接的な政治内容であるとまとめた。

 

実践的影響

本研究では、若いユーザーに対して政治的内容のビデオ制作上、サポートやプラットフォームを提供するためのティックトックの稼働モデルを考察したことで、関連するソーシャルメディアに、政治的内容の作品の制作及び伝播における促進力を果たす上で、示唆を与えることを望んでいる。

 

社会的影響

本研究は興味深いアプリでの若者ユーザーのソーシャルメディア行動を検討した。若者がアプリで提供してくれた資源を活用し、ある事件に関わる内容を作成したり、伝えたりする実態をも捉えた。本研究を通して、ティックトックの稼働モデルを手本に、関連するソーシャルメディアに対して、若者の社会事件に対する認識を深める上での責任意識を引き起こすものでもある。

 

オリジナリティ・研究価値

本研究はコネクティブ・コレクティブ(Connective-Collective)的アプローチを通して、独特な側面から若者のソーシャルメディア行動主義について考察したものである。どのように若いユーザーによる大衆行動が行われる新しい舞台に転換できるか、どのように硬い政治内容を調整すれば新しくダイナミックな舞台のゲーム性に相応しくなるかなどの問題をめぐるティックトックの稼働モデルを検討した。それ以外に、マイクロビデオで、創造的なアプリケーションであるティックトックを手がかりに考察を行った本研究も仮想環境でのガサ衝突の研究の先駆けとなり、行動主義という課題に貢献できたものでもある。

 

キーワード: TikTok, オンラインメディア, コンテンツ分析, オンライ行動主義

 

 

3. YouTube and TikTok as Platforms for Learning about Others: The Case of Non-Chinese Travel Videos in Shanghai Disneyland

他者を知るためのプラットフォームとしてのYouTubeTikTok:上海ディズニーランドにおける非中国人観光客の旅行動画を例に

著者:Arthur D. Soto-Vásquez

https://doi.org/10.1515/omgc-2022-0012

 

研究目的:

既存のディズニー・ファンによる旅行動画の人気が高まる中、ブランドの国際化、オンライン·ビデオ文化、ディズニーファンダムなどについての研究を進める上で、必要な条件も整ってきた。ビデオベースのソーシャルメディアは、文化的他者のより人間味のあるように表現できるのか、また、コンテンツのトピックはどの程度で表象を形成しているのか、などについてさらなる研究が必要となっている。

 

研究方法:

この研究では、上海ディズニーランドを訪れた非中国人観光客がどのように彼らの観光体験を動画によって披露しているのか、またどのように文化的差異を仲介するのかについて検討するために、帰納的質的研究法を取り入れ、YouTubeTikTokでの人気旅行動画を対象に分析を行うことにする。

 

研究結果:

これらの動画では、先進技術によるアトラクションを紹介することで、視聴者に畏敬の念や羨望を抱かせてやるようなものが多い。そして、少数ではあるが、中国人ゲストの振る舞いを取り上げ、ディズニーゲストに期待される行動とは異なる非標準的なものとしてマークする動画もある。一方、YouTubeTikTokで掲載されている動画では、サブジャンル·コメント·視線·ブランドへの親近感など各方面において、ずいぶん違っているものを表現している動画が多く見られる、と分析によって明らかになった。

 

実用的な研究意義:

中国市場に参入するブランドは、その中国という環境への適応を意識しながら建設した各施設が、中国以外の忠実なオンライン·ファンにどのように受け取っているかも把握する必要がある。この研究では、旅行記でよく使われる表現がオンライン旅行メディアにどのように影響し、またそれによって、サイトユーザがどのように中国を認識しているかを明にした上で、論争や多様な文化のサンプリングに対するプラットフォームのインセンティブ強化機能をも示した。

 

社会的な研究意義

技術への畏敬の念、および観客の振る舞いに対する批評は、ディズニーファン文化によって構成されている。この文化には、アイデンティティと密接に関連するため、ブランドに対する所有的な保護意識が含まれている。これらの要素は、YouTubeTikTokでは若干異なる形で展開されている。YouTubeの人気動画は、実体のないライドスルーや文化的な「教育」など、外側に焦点を当てた視線を特徴とする傾向がある。それに対して、TikTokの人気動画は、視線を内側に向け、体験にフォーカスしている。

 

研究の価値:

本研究は、YouTubeTikTokこの2大プラットフォームの利用状況を比較し、上海ディズニーランドのメディエーション機能について検討したものである。今までの研究では、同じトピックのプラットフォーム利用をテーマにした比較研究がそれほどされていないが、本研究では、同じトピックのプラットフォームを比較した比較研究として後見性の持つものだと言えよう。

 

キーワード:上海ディズニーランド、YouTubeTikTok、中国、ファンダム

 

 

4. TikTok/Douyin Use and Its Influencer Video Use: A Cross-Cultural Comparison between Chinese and US Users

ティックトック(ドウイン)及びそのインフルエンサーによる利用状況に基づく異文化比較:中米ユーザーの利用状況を手がかりに

著者:Yang Yang

https://doi.org/10.1515/omgc-2022-0016

 

研究目的:

本稿は中米異文化比較研究であり、短時間動画共有サービスを提供するソーシャルメディアであるティックトック(ドウイン)について、特に中米両国での利用状況について考察することを目的とする。アメリカと中国は文化的価値観の違いが顕著であるため、中米異文化比較は欧米とアジア諸国間の異文化比較研究に貢献度が高いと見なされる。本研究では、ティックトック(ドウイン)プラットフォーム機能そのもの、ティックトック(ドウイン)及びそのインフルエンサーによる利用方法をそれぞれ調べる以外に、文化的価値観がティックトック(ドウイン)利用におけるユーザー行動にどのような影響を与えるかをさらに検討しようと努める。

 

研究方法・デザイン:

本研究では、中米両国でティックトック(ドウイン)ユーザーに対して、同様の質問項目で、中国語と英語の2言語でそれぞれアンケートを実施した。アンケートでは、調査対象の属性情報、ティックトック(ドウイン)ユーザーの使用嗜好、インフルエンサーによる利用者の使用嗜好、文化的価値観などを把握するために設問をしており、回答を求めた。

 

研究結果:

調査結果では、まず、中国人ユーザーは米国人ユーザーよりティックトック(ドウイン)の利用経験が長く、毎日の利用時間も長いということが明らかだった。また、インフルエンサーの属性や特徴については、中米ユーザーでは、プラットフォーム選択上異なった好みを見せている。具体的には、米国人ユーザーは音楽系インフルエンサーによる利用が多く、一方、中国人ユーザーは料理系インフルエンサーによる利用が多く見られる。それから、中国人ユーザーは、米国人ユーザーよりインフルエンサーの影響を受けて購入決定を下す傾向が強かったこともわかった。さらに、中国人ユーザーは米国人ユーザーより高い個人主義スコアと低い権力距離スコアを示しており、これはホフステード(Hofstedeが検討した各国の文化スコアと矛盾していることが明らかになった。

 

研究の意義:

マーケティング従事者は、関連するマーケティング実践ではティックトック(ドウイン)のユーザーの属性情報と使用嗜好を考慮すべきである。また、ホフステードの指摘した文化スコアと比較して、中米ユーザーの文化スコア(個人主義と権力距離)が変化したことを明らかにした。さらに、場合によっては、文化的価値観がユーザーのティックトック/ドウインの使用に影響を及ぼすことも実証されている。従って、本研究の新しい知見は、従事者が文化的差異を考慮して意思決定を行う際に、重要参考を提供できると信じる。

 

オリジナリティ:

本研究は、ティックトック(ドウイン)の利用状況を米国と中国で比較した最初の研究であり、ホフステードの文化次元理論に対する理解を深めた。さらに、プラットフォームの利用とそれが両国間の文化の違いによってどのように影響を受けているかについての詳細で価値のある情報も示している。

 

キーワード:中国、米国、文化研究、ティックトック(ドウイン)、インフルエンザ、調査

 


5. If I’m not streaming, I’m not earning: Audience relations and platform time on Douyin

ライブ=金儲けの唯一王道:ティックトックの参加者関係とプラットフォーム時間

著者Anthony Fung,  Milan Ismangil, Wei He, Shule Cao

https://doi.org/10.1515/omgc-2022-0001

 

要旨

研究意義

本研究でティックトックをはじめとするプラットフォームの利用によって、人々の日常生活に対する認識どのように再構築されるかを検討した。日常生活のプラットフォーム普及につれて、私たち日常生活での行動とプラットフォームとの関係が変わりつつあることが明らかになった。これは中国だけでなく、デジタルプラットフォームがますます重要になってきているどの国でも同じであるさらに、本研究ではプラットフォーム時間と抽象的な視聴者の中国ティックトックにおける役割に焦点を当てていた。

 

研究設計・研究方法

本研究はバイトダンス(ByteDance)北京本部のティックトックとの共同研究である。研究方法としては、ショートビデオチャンネルを運営する上で十分な活動量と強いモチベーションを持つクリエイターを選出するため、1万人以上のフォロワーを持つクリエイターを抽出した。20197月、一週間内に上述の調査対象に調査票を送付し、計2375名から回答を収集できた。

 調査結果を簡単に読んだ後、アイデンティティを明らかにするため、同意を得たうえで50名のクリエイターに対して、ディプスインタビュー(in-depthinterview)を行った。この過程で、バイトダンスからは50名のクリエイターへの連絡の上で協力をいただいた。

 

研究成果:

本研究では、調査結果を踏まえて、抽象的な視聴者(Abstract Audiencesとプラットフォーム時間(Platform Time)という二つの概念を検討しました。これは、プラットフォームと利用者の関係を理解する上で大いに役立つと考えられる。視聴者としては、参与度の面でこれまで以上にコンテンツ作成者に近づいているという錯覚を覚えやすくなるが、一方では、視聴者が同時にプラットフォーム分析によって抽象化されている、ということから、視聴者が単にコンテンツ作成者に統計データとして扱われていることと考えられる。

 

独創性/価値

ティックトックではクリエイターを完全制約しないのではなく、彼らに新しい時間形式のプラットフォーム範囲内での自由を提供する。クリエイターの勤務時間も一定ではなく、ライブ時間とアップロード時間のニーズに合わせて、フォロワーを増やせることを確保するよう、自己調節することができる。更に、クリエイターが生き残るためには、視聴者とプラットフォームのアルゴリズムを理解する必要がある。

 

キーワード:TikTok,ティックトック,プラットフォーム化,中国,アルゴリズム,プラットフォーム

 

 

6. Online Image and Self-Presentation: A Study on Chinese Rural Female Vloggersオンライン・イメージと自己呈示:中国農村の女性ビデオブロガーに関する研究

著者:Zhi Li and Huijie Zhu

https://doi.org/10.1515/omgc-2022-0015

 

研究目的

この実証研究の目的は、インターネットへのアクセスが増えている中国農村部の女性ビデオブロガーが、インターネットでどのように自己を呈示し表現しているかを調べ、自己表現の動機、それからインターネット上のメディアイメージが中国農村部女性の実生活を正しく反映しているかを分析することである。

 

研究デザイン・方法論

中国で最も人気のあるビデオプラットフォームの一つであるXigua Video(西瓜視頻)から、30人の農村女性のビデオブロガーと2580件の動画を対象に、コンテンツ分析と事例調査を行った。Xigua VideoDouyin(中国版Tik Tok)と同じ会社に属しており、多くのクリエイターを抱えている。Xigua Videoにカントリーカテゴリーが設置されることで、農村動画は動画プラットフォームにとっての重要性が窺える。

 

研究成果

既婚女性は、農村の女性ビデオブロガーの主体として、ユニークなユーザー名設定を使う傾向がある。さまざまな顔写真の中でも、自信に満ちた笑顔が主流である。動画のテーマは主に農村の家庭生活に焦点を当てている。といったことが調査研究で明らかになった。更に、動画テーマの分析によって、農村の女性たちがどのような技術を使って動画を撮影しても、イメージ作りは男性の視線と家父長制によって制約されていると推測できる。要するに、自意識が目覚め始めたとはいえ、まだ拘束されていると考えられる。

 

研究上の意義

この研究は、現代中国における農村舞台の動画の背後にある性別の枠組みを明らかにしおり、地方の女性ビデオブロガーが自分を知るきっかけにもなる。

 

実践的意義

インターネット政策立案者は、この研究に基づいて農村女性の短編ビデオの普及を指導することで、農村女性の地位と生活を向上させることが期待できる。

 

オリジナリティ/価値

中国農村部の女性ビデオブロガーの意識と認知能力をフェミニズム理論に基づいて検証する実証研究である。

 

キーワード:フェミニズム、農村テーマのショートビデオ、農村地域、農村女性、発展途上国

 

 

7. A review of online communication research in Hungary

ハンガリーにおけるオンライン・コミュニケーション研究の概要

著者Gergő Háló 

https://doi.org/10.1515/omgc-2022-0026

 

概要

1990年代半ば以来、ハンガリーではインターネット関連のコミュニケーション研究がブームになっている。にもかかわらず、これまでのところ、この分野を定義する歴史的・時事的なトレンドについて、研究者たちは体系的な概観を提供することができていない。このギャップを埋めるため、本研究では1995年から2021年の間に、この分野で最も影響力のある学術誌で発表されたハンガリーのオンラインメディア研究の主な動向と発展について、体系的な文献整理を行う。ハンガリーは、その歴史的変遷からみると、社会主義およびポスト社会主義の中東欧地域の代表的な事例として、ソビエト連邦の抑圧的な政治体制のもとで、数十年にわたって社会科学分野の発展が事実上不可能とされた地域である。ゆえに、本研究では、この分野におけ主な研究伝統として、ニューメディアとインターネット、情報社会、格差とデジタルデバイド、教育とデジタルリテラシー、電子政府、ソーシャルメディア、ビデオゲーム、ビッグデータ、アルゴリズムと人工知能とその歴史的発展についてまとめる。さらに、その結果を振り返り、この地域における現在の国際化の過程、およびこうした変化とハンガリーの歴史的・文化的遺産との関連を踏まえて、ハンガリーのコミュニケーション研究の展望をも明らかにする。

 

キーワード:オンラインメディア、グローバルコミュニケーション、系統的文献レビュー、ハンガリー

 

 

8. The Effect of Children's Exposure to the YouTube Platform Moshaya Family Channel on Socialization of the Saudi Child Regarding Life Satisfaction

生活満足度の観点から見たYouTubeチャンネル「Mushaya's Channel」の利用によるサウジアラビアの子供たちの社会化プロセスへの影響

著者:Afnan A Qutub , Alaa A Muhammad

https://doi.org/10.1515/omgc-2022-0043

 

要約

本研究では、YouTubeチャンネル「Mushaya's Channelの利用が子供の社会化に与える影響を明らかにすることを目的とし、チャンネルが提供するコンテンツと、それが子供の道徳、行動面への影響に注目し、チャンネルへの接触頻度が子どもの生活満足度に与える影響を検討したい。したがって、本研究では、チャンネルの視聴回数や契約数の伸び、および子供たちのチャンネルコンテンツへの愛着について検討した。 「Mushayah Familyのファンである513歳の子供を持つ、338人のサウジアラビアの母親を対象に、オンラインアンケート調査を実施した。 この調査から得られた最も重要な結論は、購読-subscribe、共有-share好き-like閲覧-viewsなどといったネットワーク(電子)用語への認識を持っている子どもの割合が高いということだ。その子どもたちはチャンネルの影響を受けて早くも有名になり、自分のYouTubeチャンネルを作りたいと思っていたからだ。更に、研究によると、チャンネルで放送されている悪戯コンテンツを好み、面白いと思って、実生活の中で真似をしている子どもたちが多いことが分かった。一方、母親のほとんどが、これらの番組が子どもたちの悪戯を煽り、子どもたちの購買意欲を刺激するものだと考えて、自分の子供がこのような番組を見るのを好まないということを明らかにした。これらは、新しいメディアプラットフォーム、特にYouTubeが、子どもたちの価値観や行動の習得に果たす役割を証明するに十分であり、それは単なる娯楽ではなく、学習、交流、娯楽を一体化するツールとなっていることを示している。

 

著者:

アフナンアブドゥーラバーケルグットブ 博士(アブドゥアジズ国王大学―コミュニケーションとメディア学院―ニュースとデジタルメディア準教授)

アラアブドゥイラシュイムハンマド 先生(アブドゥアジズ国王大学―コミュニケーションとメディア学院―公共関係修士)

 

キーワード:Mushaya's Channel、ユーチューブ、生活満足度、人気、サウジアラビア、カルティベーション理論