訳者:林彬(リン ヒン)、 陳昕(チン キン)、侯小天(コウ ショウテン)、施懿(シ イ)、黄雪遥(コウ セツヨウ)、徐晨吉(ジョ シンキツ)、 李甜甜(リテンテン)、張雨珏(チョウ ウカク)、趙雨璐 (チョウ ウロ)
Editorial Essay
エディトリアルエッセイ
Creation, Curation and Correction of Misinformation and Global Communication
誤報の生成、整理、訂正とグローバルコミュニケーション
Louisa Ha
https://doi.org/10.1515/omgc-2022-2001
過去10年間の誤報研究のレビュー(Ha et al., 2021)が示すように、誤報は学際的な関心の高いテーマとなり、オンライン上の投稿が数秒で全世界に簡単に発信できるようになったデジタル時代において、ますます重要になってきている。注目すべきは、コミュニケーション分野はこのテーマに最も多く貢献しているということである。
エラーメッセージはさまざまな形で表示されている。意図的であるかどうかから見て、誤報(misinformation)は主に非意図的に作成し流布する虚偽の情報のことであり、それに対して、偽情報(disinformation)は人々を惑わすために意図的に作成し流布するものである(Fallis,2009)。しかし、意図性が不明な場合、誤った情報のすべてが誤報としてとみなされてしまう。フェイクニュースは、真実とは思えないニュース(Meeks, 2020; Nielsen & Graves, 2017)や、ニュースを装った捏造情報の総称となっており(Lazer et al., 2018)、本来のパロディやニュース風刺として使われていたものとは大きく異なるものである(Day & Thompson, 2012)。インフォデミック(Infodemic)とは、パンデミック時に誤報が高速かつ広範囲に拡散したことを表し、ウイルスの比喩を用いた用語である(Simon & Carmago, 2021)。一方、陰謀論は、ある出来事に対して、権力者が公共の利益を犠牲にして自分たちの利益のために密かに結託していると非難する推測的な説明を伴う誤報の一種である(Konkes & Lester,2017)。このような高度に二極化された政治環境とCOVID-19などの新しい疫病パンデミック危機において、誤報には陰謀論などの政治的内容、新型コロナ(COVID-19)ワクチン接種などの健康上の誤った情報などが含まれる可能性がある。誤報による社会への危害は、発展途上国だけでなく、先進国にも及んでいる。
本誌のテーマ号「誤った情報とグローバルコミュニケーション」では、先進国と発展途上国の誤報に関するオリジナルの研究を収集することを目的としている。2022年3月12日に上海で行われたジャーナル創刊式では、誤報とグローバル・コミュニケーションに関するオンライン・シンポジウムを開催した。本号の文章の一部は、そのシンポジウムでのフルペーパーを査読の上、改訂したものである。その他は、公募による論文である。本号は、中国香港、ブラジル、スペイン、米国からの論文で構成されており、誤報の生成(Creation)、整理(Curation)、訂正(Correct)、いわゆる3Cをカバーしている。誤報の生成(Creation)は、人々に誤った情報を与えるために用いられる戦術のことである。誤報の整理(Curation)とは、誤報を収集し、拡散させることである。そして、誤報の訂正(Correct)とは、ファクトチェックなどの誤報対策の解決策として、正確な情報で誤報の信憑性を変えることを指している。本号には、「健康に関するプレスリリースで使用される誤った情報戦略に対する反応」、「信仰に基づく誤った情報の訂正に対する反応」、「情報への訂正における感情を検出する機械学習モデル比較」、「高齢者によるWhatsAppグループでの誤報の整理と共有」、「誤認と誤報の共有に対するコメントへの信頼性の仲介」、「ポルトガルとブラジルのファクトチェックサービスへの資金提供と提案」、「前政権への積極的情報活用と信頼が現政権に対する陰謀論信仰をどのように増加すること」、などが掲載されている。
研究論文のハイライト
本号は、多くの国や様々な信仰を持つ人々の間で、高度に両極化した健康問題になっている新型コロナ(COVID-19)ワクチン接種の誤報に関する2本の論文からスタートしている。
Stephanie Tsangの論文「怠惰よりも偏見:新型コロナ禍にまつわる誤った情報戦略が不正確で偏った認知に与える影響」は、2022年3月に香港での新型コロナ感染拡大の波のピーク時に、香港人代表サンプルを対象に行われた実験である。その実験によると、人々がワクチン情報の不正確さやフェイク性を信じるのは、先行研究が仮定したような情報処理能力の怠慢によるものではなく、ワクチン接種の危険性についての偏った信念によるものであることがわかった。研究者や科学的証拠を引用する誤った情報戦略を使用することは、参加者の不正確さには影響しないということも分かった。
博士Enamul Kabirの論文「イスラム教徒聖職者による新型コロナワクチンのイスラム教徒聖職者による新型コロナワクチンのミスインフォメーション訂正への反応に関するトピックおよびセンチメント分析:3つの機械学習モデルの比較を通して」はYouTubeで初めて、新型コロナによる肺炎ワクチンの信仰に基づく誤った情報の訂正に対するイスラム教徒聖職者の反応に関する研究である。その結果、イスラム教聖職者の誤報訂正動画に対するコメントの多くはマイナスである一方、最も声率直なコメント者はイスラム教関係者でも、そのネットワークに基づいて他人に影響力のあるオピニオンリーダーでもないことがわかった。当研究では、さらに3種類の機械学習モデルが反ワクチンの誤った情報に対する情緒を検出する上での正確性を比較することで、方法論的な貢献を提供した。バランス型ランダムフォレストというモデルは評論感情の力価を検出する上で最も正確性があることも発見した。
公衆衛生上の誤報だけでなく、政治上の誤報も普遍的である。政治的誤報の一種は一部の国内と国際政策問題の陰謀論でもあると言われる。Hyelim Lee, Loarre Andreu PerezとJeong-Nam Kimが書いた「陰謀論への信念拡大の二面性: トランプ政権とバイデン政権への信頼がもたらすポジティブなコミュニケーション行動の違い」はアメリカ国民に対する全国的な調査であり、米国バイデン政権時に3種類の反バイデン陰謀論への信仰が高まるのは、トランプ政権への信頼とネットでの情報探索、情報共有、情報先取りといったコミュニケーション行動力が高いからだと指摘した。しかし、陰謀論への信仰においては、国際問題と国内問題に違いはないとも指摘した。
Juan Liu, Carrie Reif-Stice, and Bruce Getz, Jr.の論文「癌治療への誤解とソーシャル共有に影響を及ぼすコメントの信憑性の媒介的役割」はオンライン実験によるものであった。彼らは、本来の投稿よりも、コメントへの信頼性が、がん治療の誤った認知にさらされることと、誤った情報を共有することとの間で仲介的な役割を果たしていることを発見した。その研究結果では、医療専門家と組織はソーシャルメディアに投稿された有害な誤った情報に対応して、誤った情報の共有を抑製する必要があると指摘した。
定性方法は誤報の使用と伝播の面で研究不足のグループに重要な見解を提供することができるとされている。南米のブラジルに目を向けて、Marilia DuqueとLuiz Peres-Netが書いた「高齢者は情報共有をやめることができるのか?——ブラジルにおけるフェイクニュースとアクティブ・エイジングに関する民族誌研究」は、高齢者がフェイクニュースや健康の誤報を広める「犯人」だという言論を払拭し、また、なぜWatsAppグループでのニュース共有がアクティブな高齢者にとって重要なアクティビティであるのかを明らかにした民俗学研究である。当研究は、高齢者が他人と共有する前に、誤報を考えずに「処理」するのではなく、親切な専門家(医師の友人や信頼できる友人)と一緒にネットで受け取った情報を審査しようとすることを発見しました。
Lucas Durr MissauとLaura Strelow Storchが書いた「ポルトガル語圏における事実確認(ファクトチェック)の取り組み:確認方法と資金調達戦略」では、コンテンツ分析と制度分析を用いてポルトガル語圏の9カ国のファクトチェックの取り組みについて研究した。しかし、調査期間中に活動していたファクトチェック機関は、ブラジルとポルトガルでしか見つからなかった。彼らは、組織と組織のビジネスモデルについて、ほとんどのファクトチェック機関が従来のニュースメディアと関連があることを発見した。ファクトチェックによると、虚偽の情報は主にテキストで広がり、虚偽のコンテクストは主にビデオや画像で広がり、より操作されたコンテンツにつながったことを示した。大量の政治的な投稿は、政界の報道機関の情報源を用いてのみ検証されました。
今号のオンラインメディアとグローバルコミュニケーション研究に関するレビューエッセイは、ナイジェリアからのものである。Eserinune McCarty MojayeとOludare Ebenezer Ogunyomboは、2015年以降にナイジェリアの2つの主要コミュニケーション誌に掲載されたコミュニケーション研究論文を調査し、ナイジェリアの学者は頻繁に共同研究を行って論文を発表しているが、ナイジェリア以外の人との協力はあまりないことを明らかにした。さらに、ナイジェリアの学者は、オンラインメディア研究に中程度の興味を示しているが、世界的または国際的なメディア問題にはあまり興味がないと示した。研究資金の不足はナイジェリアの厳しい伝播研究の主な障害と考えられている。
発展途上国での研究については、「偽情報・デマに関する整理と検証:イベリア-アメリカにおける研究回顧(2017-2020)」というタイトルのコメント記事を翻訳した。この翻訳文章は、テーマ号に掲載された最新のオリジナル論文を補完するもので、イベりアメリカの同僚たちが自国の偽情報というテーマでどのような研究を行ってきたかを示している。
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1. 怠惰よりも偏見:新型コロナ禍にまつわる誤った情報戦略が不正確で偏った認知に与える影響
Stephanie Jean Tsang
https://doi.org/10.1515/omgc-2022-0037
研究目的
新型コロナ感染拡大にまつわる科学的な誤った情報に遭遇する機会が増えつつある中、本研究は、さまざまなタイプの誤った情報が読者の情報に対する認知にどのように影響するかを考察し、これらの情報に対する不正確的かつ偏った認知の背後にあるメカニズム(動機つけられた推論と古典的条件つけ理論)を特定することを目的としている。
研究方法
本研究では、当時5回目の新型コロナ感染拡大の波がピークに達した2022年3月に、香港で行われたオンライン実験のデータを採用することにした。これらのデータは国勢調査データ(N = 835)に基づいて年齢別に作成されたクォータサンプルを用いて収集されたものである。
結論
通常、読者は曲解された内容からでっち上げられた内容を見分けることができないと思われる。反対的態度の示すメッセージを与えられたとき、研究成果を裏付けとするメッセージを読んだ人は、同じメッセージでも引用を裏付けとするメッセージを読んだ人よりも、そのメッセージがより不正確で偽物と評価し、逆に、分析的思考や推論をする習慣を持つ読者の自己認知は、情報の不正確性や虚偽性の評価には影響しないということが明らかになった。
研究意義
人々が誤った情報の影響を受けやすいのは認知的怠惰のためか、それとも自分の個人的信念を守りたいからか、という論争について、本研究では動機推論仮説に証拠を提供した。 メディアリテラシープロジェクトは、読者が情報処理における個人的な偏見に注意を払うように戦略を決定すべきであるとも示唆している。
オリジナリティ・研究価値
これまで多くの研究者が、読者が誤った情報の影響を受けやすいメカニズムを特定しようとしているが、この研究では曲解され、でっち上げられている内容を見分けようとしている。また、認知反射テストは西洋でも広く研究されているが、本研究では香港でこの傾向をテストした。今後の研究では、さまざまなタイプの誤った情報が読者に与える影響を実証的に検証し、発見されたさまざまな影響に対して異なる戦略を策定し続けるべきであると提唱したい。
キーワード:誤った情報、不正確な知覚、偏った知覚、分析的思考、動機推論、科学に対する不信、香港
2. イスラム教徒聖職者による新型コロナワクチンのミスインフォメーション訂正への反応に関するトピックおよびセンチメント分析:3つの機械学習モデルの比較を通して
https://doi.org/10.1515/omgc-2022-0042
研究の目的
本研究は、YouTubeにおけるムスリム聖職者の反ミスインフォメーションキャンペーンに対するイスラム教ユーザーのセンチメントを理解しようとするものであり、教師付き機械学習モデルを用いてセンチメントを検出するアルゴリズムを開発することを目的としている。
研究の方法
本研究では、ナイーブベイズ、SVM、バランス型ランダムフォレストの3つの機械学習アルゴリズムを採用し、YouTubeにおけるムスリム聖職者の反ミスインフォメーションキャンペーンに関するムスリム感情を検出できるセンチメントモデルを構築した。全体として、9701件のコメントが収集された。また、YouTubeのコメントで最も議論されているトピックを理解するために、LDAベースのトピックモデルも採用された。
研究の結果
混同行列と精度評価により、バランス型ランダムフォレストベースのモデルが最高性能を発揮することが分かった。全体的なセンチメント分析では、コメントの74%が否定的で、26%が肯定的であることが分かった。また、LDAベースのトピックモデルにより、YouTubeのコメントに含まれる10個のキーワードに関連する、最も議論されている8つのトピックが明らかになった。
実用的意義
本研究で得られたセンチメントとトピックモデルは、特に公衆衛生部門の職員や研究者が、イスラム教徒におけるワクチン接種のためらいの本質をよりよく理解するのに役立つと思われる。
社会的意義
本研究は、イスラム教聖職者と医療専門家の共同タスクフォース、および今後のミスインフォメーションキャンペーンに、ソーシャルメディアにおけるそのような行為の影響を理解するためのセンチメント検出モデルを提供した。
独創性
ミスインフォメーションがソーシャルメディア上のセンチメントや人々の態度にどのような影響を与えているかについては、多くの研究がなされているが、誤報への対抗策に関するイスラム教徒のセンチメントは十分に研究されていないままだった。本研究は、イスラム教聖職者の宗教的ワクチン関連のミスインフォメーションへの対策に関するイスラム教徒のセンチメントを分析し、センチメント検出モデルを構築した初めての研究である。
キーワード:COVID-19ワクチンのミスインフォメーション、バランス型ランダムフォレスト、機械学習、センチメント分析、トピックモデル、計算法、誤報訂正、イスラム教聖職者
3. 陰謀論への信仰拡大の二面性: トランプ政権とバイデン政権への信頼がもたらすポジティブなコミュニケーション行動の違い
Hyelim Lee, Loarre Andreu Perez and Jeong-Nam Kim
https://doi.org/10.1515/omgc-2022-0035
研究目的:
デジタル化した環境は、ユーザーが積極的にコミュニケーション活動に参加することを可能にしている。しかし、このような積極的なコミュニケーションこそが、社会問題をめぐる事実への誤判を増やすもととなる。また、このようなコミュニケーションが党派的偏見と結びついた場合、特に悪い影響をもたらす可能性がある。本研究では、社会問題に関する積極的なコミュニケーション行動や大統領政府(トランプとバイデン)への信頼度の違いが陰謀論への信仰を高めるかどうかを検証した。
デザイン・方法論・アプローチ:
これを検証するために、本研究では2021年7月から8月にかけて収集されたアフガニスタン問題、ブラック・ライブズ・マター問題と有権者の詐欺問題という3つの政治問題に関するオンライン調査データセット(Amazon Mechanical Turk,n=1,355)を使用した。
研究結果:
調査結果では、積極的なコミュニケーション行動をとる参加者において、トランプ政府への信頼度が高く、バイデン政府への信頼度が低いほど、陰謀論への信念が高まることが示唆されている。興味深いことに、政府への信頼と積極的なコミュニケーション行動の相互作用効果が、トランプ支持者とバイデン支持者の両方において発見された。
研究意義:
ネット上の誤った情報に対処する研究をはじめ、素人に誤った情報の危険性を教育することに焦点を当てた研究が盛んに行われるようになってきた。自分の情報行動を注意深く診断しなければ、誰もが陰謀論に陥る可能性があることを認識しなければならない。
オリジナリティ:
本研究は、政治的立場に基づく陰謀論の状況的信仰に対する人々の認識を高めることができます。さらに、本研究は、陰謀論に対する信仰をより深く理解するための、今後の研究の支えとなるものでもある。
キーワード:積極的なコミュニケーション行動、陰謀論への信念、信頼、問題解決の状況理論
4. 癌治療への誤解とソーシャル共有に影響を及ぼすコメントの信憑性の媒介的役割
Juan Liu,Carrie Reif-Stice,Bruce Getz, Jr.
https://doi.org/10.1515/omgc-2022-0033
研究目的
偽ニュースの出現ががん患者にとって、厳しい問題となってきた。具体的に言えば、癌の治療法としての大麻の使用は、マスメディアでは、がんの代替治療法に関するソーシャルメディアのコンテンツで最も共有される内容である(Shiなど 2019)。故に、本研究では、偽ニュース、知覚信憑性及びソーシャルシェアと不正確な健康知識との関係をより良く把握するために、私たちはアメリカでオンライン実験を行い、フェースブックにおける人々の癌の偽ニュースに対する反応を考察する。
研究デザイン・研究方法
本研究では、四つの条件でオンライン実験を実施した。情報とコメントの知覚信憑性が、癌に関する不正確な情報を誤解し、社会的共有に影響を与える媒介的要素であるかどうかを考察する。
研究結果
研究によって、様々なコメントが癌治療に対する誤解、及びソーシャル的共有意図に及ぼす影響のメディエーターとして働くのは、情報そのものの信憑性よりもむしろコメントの信憑性であることがわかった。
実践的意義
本研究では、マスメディアにおける不正確な健康情報を修正するために重要な示唆を提供した。調査結果は、医療従事者や組織が、誤解を招き、有害となりうる誤報の投稿に関与することの重要性を示している。さらに、医療従事者としては、ソーシャルメディア上の誤った情報から信頼できる健康情報をより良く見分けるために、個人のメディアリテラシーを高めるためのトレーニングを提供する必要があることを明らかにした。
研究価値
本研究は、今までの誤情報の是正と信憑性に関する研究を発展させたものである。理論的には、認識されたコメントの信憑性が偽ニュースの拡散をを緩和するメディエーターとして機能していることが発見された。さらに、異なっている是正コメント(対仲間の応援コメント)がコメントの信憑性により、癌治療の誤解を増やしてしまい、このような逆効果で、癌治療の誤解が持続的に存在し、複雑的で、是正し難いことも明らかにした。
キーワード:アメリカ;実験;フェースブック;不正確な健康知識;専門家の是正;コメントの信憑性;逆効果
5. 高齢者は情報共有をやめることができるのか?——ブラジルにおけるフェイクニュースとアクティブ・エイジングに関する民族誌研究
Marilia Duque and Luiz Peres-Neto
https://doi.org/10.1515/omgc-2022-0034
研究目的
年齢と虚偽情報との関連性がしばしば文献で論じられているように、フェイクニュースの拡散に高齢者が大いに働いているとされることで、モラルパニックを引き起こしているという。本論文では定性的研究方法を取り入れ、高齢者がオンライン情報を獲得しようとする動機が何か、そしてなぜ高齢者にとって共有がなぜ重要なのかを調査し、年齢と虚偽情報との関連性について更なる検証を提供しようとする。
研究デザインと研究方法
ブラジルのサンパウロに住むある高齢者のグループを研究対象に、16ヶ月間のエスノグラフィー研究を実施した。対象のオンラインコンテンツや健康情報を評価する規準或いは戦略にアプローチするために、観察以外、インタビューも行い、徹底的調査を進めていた。
研究結果
参加者は複数のWhatsAppグループでつながり、そこでアクティブ・エイジングに関連するコンテンツを共有した。共有することで、サードエイジャーとしてのアイデンティティが形成され、同時に、地域の仕事志向の倫理観はキュレーターとしての仕事を促していた。コンテンツを信頼し共有するという参加者の意思決定には、間接的な影響体系があった。コンテンツは長期的な対人信頼に基づいて評価され、その一方で健康情報は医療分野の専門知識によって検証された。また、「医療系の友人」からの医療指導は、参加者がネットで見つけた健康情報をより温かいもののように感じさせた。
現実意義
高齢者は、教育レベルの高さに関係なく、有効な健康情報を得るために専門家の友人を必要とする。この依存性はアクティブ・エイジングに影響を与え、健康の意思決定におけるインターネットの働きにも影響を与えうる。
社会意義
本研究は、政策立案者や健康産業界が、高齢者がどのように健康情報にアクセスし、医療指導を受けることができるかを理解するための情報を提供するものである。
独創性・価値
本論文は、高齢者の共有行為が地域の文化的文脈に影響されることを示し、年齢とフェイクニュースの因果関係に反証を提供することに役立てます。
キーワード
アクティブ・エイジング、フェイクニュース、健康関連コンテンツ、個人の影響力、温かい専門家、エスノグラフィー、ブラジル、WhatsAppグループ
6. ポルトガル語圏における事実確認(ファクトチェック)の取り組み:確認方法と資金調達戦略
Lucas Durr Missau and Laura Strelow Storch
https://doi.org/10.1515/omgc-2022-0028
目的
近年、ファクトチェックは、ファクトチェック担当者が政治的議論により関心を持っていた初期段階から、誤った情報との闘いが主な目的となる段階へと変化している。 ゆえに、本研究では、使用されている検証方法と組織モデルに焦点を当て、ポルトガル語圏の国におけるアクティブなファクト チェック アウトレットの標準化とカスタマイズの側面をより詳しく調べることを目的とする。
研究方法
本研究では、コンテンツ分析に基づいて、各ファクトチェックアウトレットの Web サイトから2019 年 6 月中の 318 件の投稿を手作業で収集し、その後、談話、出典、文脈、分類、グラフィック表現、資金調達という6つの一般概念に従って、各投稿を分析した。ブラジル (13) とポルトガル (2) には、15 のアクティブなファクト チェック サイトがあったのに対して、 アフリカ諸国では、アクティブなアウトレットが見つからなかったことが分かった。
調査結果
ファクトチェックの実施には工夫の余地があるが、それは、採用された分類モデルと、それらが要求するグラフィック表現に制限されている。 ポルトガル語圏の 2 つの最大の国 (ブラジルとポルトガル) のみが、調査期間中に積極的なファクトチェックの取り組みを行っていた。モザンビークでは、研究期間中に公表されていないコンテンツで不活発だったMozcheckというコンセントが見つかった。 本研究では、分析により、誤った情報のタイプとそれが最も頻繁にリンクされるメディアとの間のパターンを検出した。虚偽情報は主にテキストで流布され、虚偽のコンテキストは主にビデオや画像で流布され、より操作されたコンテンツにつながっていた。 さらに、コンテンツの検証に使用された情報源に関しては、報道機関による情報源のみに依存する投稿が大量にあり、特に政治的な問題で顕著であることが明らかになった。
現実的な意味
分析されたデータによると、標準化の傾向が従来のメディアによるこれらの動きに関連しており。、一方、事実確認の実践の対照的な側面は、アウトレットによって作成された分類モデルとグラフィック表現に関係していることを明らかにした。
社会的意義
本研究では、ファクトチェック機関が、その組織的・制度的ビジネス モデルにおいて、従来のメディアと結びついていることを示した。さらに、 独創性と革新性は、ジャーナリストやその他の専門家による事実確認の実践に限定されているということを指摘できた。
イノベーション/価値
本研究は、ポルトガル語圏の国におけるファクトチェックの慣行を比較する最初の研究であり、ジャーナリズムの実践のさまざまな側面に焦点を当てることに加えて、ファクトチェック機関の組織的要素の分析も試みようとするものでもある。
キーワード:ファクトチェック、ポルトガル語、報道機関、方法論、資金調達、ジャーナリズム、コンテンツ分析、ゲートキーピング理論。
7. ナイジェリアにおけるオンラインメディアとグローバルコミュニケーション研究
Eserinune McCarty Mojaye and Oludare Ebenezer Ogunyombo
https://doi.org/10.1515/omgc-2022-0048
要旨
グローバル的なオンラインメディアの発展は、これらのメディアが世界に与える影響をよりよく理解することを必要とする。 コミュニケーション研究者は、レトリックとグローバリゼーションがいかにダイナミックに相互作用するか、異文化間の相互作用を通じて情報がいかに広がるか、さらに急速に変化するグローバルメディアの発展ぶりが文化、社会、経済、政治にいかに影響するかを検証してきた。しかし、こうした研究の注目点を総合的に分析し、ナイジェリアにおけるオンラインメディアとグローバルコミュニケーションに関する学術研究の傾向を明らかにする研究はめったにされていないようである。本研究は、ナイジェリアにおけるオンラインメディアとグローバルコミュニケーションに関する学術的なアプローチを理解するための道筋を提示するものである。本研究では、2015年から2021年にかけて、ナイジェリアの学術誌「Nigerian Journal of Communication」と「Journal of Communication and Media Studies」の2誌に掲載されたオンラインメディアとグローバルコミュニケーションに関するすべての論文を、著者名、使用した理論、研究集団、研究方法、研究焦点といった内容カテゴリーを用いて調査した。そして、結果としては、世界の研究者の間で非常にホットな研究分野であることが証明されたソーシャルメディアは、ナイジェリアの研究者の間でも高い地位を占めており、知識を成長させ進歩させるための主要な方法であるコラボレーションも重要である知識の成長と進歩の主要な方法である共同研究もまた、ナイジェリアのコミュニケーション研究者の間で一般的に行われていることも分かった。しかし、一方では、ナイジェリアにおけるコミュニケーション研究にとって資金不足は大きな問題であり、分析した73本の論文のうち、資金提供を受けたものはなかったということも明らかになった。
キーワード: オンラインメディア、グローバルコミュニケーション、コミュニケーション研究、ナイジェリア。
8. 偽情報・デマ?に関する整理と検証:イベリア-アメリカにおける研究回顧(2017-2020)
Javier Guallar, Lluís Codina, Pere Freixa, Mario Pérez-Montoro
https://doi.org/10.1515/omgc-2022-0055
要旨:この研究の目的は、2017年から2020年の間にイベリア-アメリカ地域で行われた偽情報についての研究を回顧に整理することにある。そこで、イベリア-アメリカ地域のインデックスジャーナルに発表された約60本の論文と関連トピックの書籍を、米国心理学会の社会科学評論基準に基づいて分析した。研究結果は3つの部分に分けて提示した。まず、偽情報に関する3つの基本概念、すなわち偽情報の用語、ポスト・トゥルース?、インフォデミック?をレビューした。次に、偽ニュース、情報障害、デマといった主な偽情報について、その種類、テーマ、形式、チャンネルを検討した。最後に、偽情報に対する主な戦略を提示し、そのうちの2つ、コンテンツ企画と事実検証ついて発表された著作をレビューした。このテーマで最も注目すべき研究者は、Magallón-Rosaで6件、Ufarte-Ruizで4件、García-Marínで3件である。同様に注目すべきのは、Palau-Sampio(2018)、Vizoso と Vázquez-Herrero(2019)、Rodríguez-Pérez(2020)のイベリア-アメリカ地域における偽情報の分析、Salaverríaら(2020)のデマの類型分析、およびLópez-Borrullと共同研究者のキュレーションに関する作品である。結論として、偽情報の現象は非常に多面的であるが、社会にはキュレーションや検証(ファクトチェック)といった対処法があることが示されている。
キーワード:偽情報、ポスト真実、情報流行病、いたずら、偽ニュース、内容整理、検証、事実検証、事実検証者。