「ネットワークメディアとグローバルコミュニケーション」2(1):日本語翻訳巻頭語と論文要旨

发布者:李晓蒙发布时间:2023-03-31浏览次数:35

訳者:林彬(リン ヒン)、 侯小天(コウ ショウテン)、姚晨(ヨウ シン)、金婕(キン ショウ)、陳昕(チン キン)、王港(ワン コウ)、趙穎新(チョウ エイシン)

 

Editorial Essay

エディトリアルエッセイ

 

Global streaming media, European green consumption, perception of Chinabefore & after COVID-19 and online memes on corruption

グローバルストリーミングメディア、ヨーロッパのグリーン消費、コロナ前後の中国に対する認識、汚職に関するオンラインミーム

 

Louisa Ha*

 

https://doi.org/10.1515/omgc-2023-2001

 

2023年春号は、世界中の読者にとって重要なトピックを持つ作品を集めた、多彩な内容となっている。最初の論文は著者のオリジナルな研究であり、世界のストリーミングメディアの2大巨頭-米国のNetflixと中国のTencent Video-に関する非常に興味深い比較研究である。唐文嘉と魏銘歐は、政治経済学の視点を通して、両社が視聴者データの利用によって繁盛を実現し、そして、定額制のNetflixと広告支援のTencent Videoが、混合資金のビジネスモデルの開発で最終的に融合する様子を示している。これらの戦略は、他のストリーミングサービスとの競争が激化する中、国際市場を拡大しながら市場シェアを維持するために不可欠である。

 

二本目の論文は、Eurobarometerの二次調査データに基づき、ヨーロッパ27カ国の消費者について比較を行ったものである。Hong VuJeff ConlinNhung NguyenAnnalize Bainesは、マルチレベル分析を用いて、個人レベルと国レベルの要因、および個人レベルと国レベルの要因の相互作用が、如何にヨーロッパの消費者が政府のプラスチックごみ政策の支持と個人のグリーン消費の実践に影響を与えたかということを明らかにした。さらに、伝統的メディアとソーシャルメディアにおける環境ニュースの消費の多様性は、政府の政策とグリーン消費の実践の支持を予測するが、他のオンライン環境ニュースの消費は予測しないと指摘している。

 

Lars Willnatと唐碩の論文では、2019年と2021年の2回にわたる全国調査を通じて、コロナパンデミックの前とその中におけるアメリカ人の中国に対する意見を比較している。作者たちは、Fox Newsなどの党派的メディアの使用が中国に対する認識にネガティブな影響を与える一方で、ソーシャルメディア、特にTikTokの利用が中国に対する好意的見方をポジティブに予測することを明らかにした。  さらに、コロナ禍が発生する前、米中貿易戦争により、両国関係はすでに史上最低になっている。  コロナパンデミックと、パンデミックへの対処における米中間の異なるアプローチは、米国内の反中感情を高め、両国の緊張をさらに悪化させてしまう、と指摘した。。

 

「『私たちは汚職と戦っているように見えるだけ...噛むことすらできない』ガーナメディアにおける反汚職オンラインミームディスクールについて」では、著者のMichael OforiFelicity Dogbatseが、TV3の有名な「Tilapia De Cartoonist」のFacebookページから汚職に関する5つのオンラインミームを収集し、視覚的修辞学分析を通じて、ガーナにおける深刻な汚職問題を取り上げた。著者たちは、これらのミームの修辞が、如何にガーナにおける現在の汚職撲滅キャンペーンを揶揄し、ユーモラスに表現しているかを検討し、また、政府の汚職に対する改善策も提案した。

 

Afonso de AlbuquerqueRaquel RecueroMarcelo Alves dos Santos Juniorのレビューエッセイでは、ブラジルのオンライン・コミュニケーション研究の起源と発展を顧みた。ブラジルのオンライン・コミュニケーション研究は、欧米の影響を受けつつも、強い批判的伝統を受け継いでいる。著者たちは、コミュニケーション研究が行われる高等教育の状況や、政治的コミュニケーション研究がオンラインコミュニケーション研究の中でいかに花を咲かせているかを説明した。ブラジルの論文と政治的コミュニケーション研究の会議録のネットワーク分析により、これらの研究論文において、異なるトピックキーワードがいかに多く言及され、それらが互いにどのように関連しているかが示されている。

 

2023年からは、アングロでないグローバルサウスの国々の記事だけでなく、アングロスフィア以外のグローバルノースの国々の論文までも翻訳されつつある。このセクションは、英語圏以外の特色のある翻訳研究と改名された。今号では、ドイツのValerie Haseとスイスの Daniela MahlMike S. Schäferというドイツ語圏の2カ国の研究者の研究を取り入れた。彼たちは、ジャーナリズム研究において、コンピュテーショナル方法や他の学問分野のより技術的なアプローチの利用が増加している中、そのような利用が、これらの研究における理論的な学際性をもたらす効果は見られなかったという見方を伝えた。本号に掲載されている論文は、ドイツのコミュニケーション誌である「Medien&ommunikationswissenschaft」の許可を得て翻訳したものである。

文章をお楽しみください!

 

 

1. Streaming media business strategies and audience-centered practices: a comparative study of Netflix and Tencent Video

ストリーミングメディアのビジネス戦略と視聴者中心主義の実践ーNetflixTencent Videoの比較研究を通してー

 

Wenjia Tang    Mingou Wei

 

https://doi.org/10.1515/omgc-2022-0061

 

目的

本研究では、文化的・経済的背景の異なるストリーミングサービスの比較研究を通して、登録者減少の危機に対応するため、プラットフォームはレコメンドアルゴリズムの改善、インフラの整備、グローバルサービスの開発などにより、どのようにユーザー体験を最適化するのかを明らかにしたい。

 

方法

本研究では、ストリーミング業界内の関連情報・データ資料についての分析を通して、ストリーミング・ビデオ・ビジネスにおけるさまざまなアプローチが、ユーザーデータの活用と効用価値の再構築の実践をどのように実現するのかを示そうとしている。

 

研究結果

グローバルストリーミングプラットフォームの間では、収益源や商品提供のカテゴリーを増加し、長期的に購読を維持し、より多くの視聴者を惹きつけることで、汎娯楽(多領域エンターテイメント)・カルチャーサービスを実現しようとする、という傾向が、明らかになっている。

 

実践的意義

本研究は、定額制動画配信(SVOD)、広告付き動画配信(AVOD)、ミックスファンドの各モードを持つストリーミングプラットフォームが、現在のハイパーインフレで競争が激化してくるメディア市場において、究極の商業成功を収めるために、どのようにビジネス戦略を変え、ユーザー中心の実践を作り出しているかを示すものでもある。

 

社会的意義

一方、本研究を通して、商業的なストリーミングサービスの形式が異なっていても、最終的には似た課題に対して、同じような解決策に帰結されやすいということも明らかにされた。

 

オリジナリティ/価値

本研究は、リアルタイムで起こるストリーミング現象の比較分析であり、ストリーミング業界の最新情報についての観察と評価を補完し、異なる商業的・文化的論理の下、デジタル生態系におけるグローバルブランドの動向への予測などにおいて貢献できそうなものでもある。

 

キーワードストリーミングメディア、NetflixTencent Video、比較研究、米国、中国、政治経済、重要メディア産業研究

 

 

2. What influences public support for plastic waste control policies and green consumption? Evidence from a multilevel analysis of survey data from 27 European countries

プラスチック廃棄物排出への抑制対策やグリーン消費に対する国民の支持に何が影響を与えるのかー欧州27カ国の調査データのマルチレベル分析に基づいて

 

Hong Tien VuJeff ConlinNhung NguyenAnnalise Baines

 

https://doi.org/10.1515/OMGC.2022-0058

 

 

研究目的

本研究では、個人レベル及び国レベルの要因が、プラスチック廃棄物に対する国民の態度や行動に与える影響について調査したい。そして、個人レベルでは、伝統的なメディア、オンラインのソーシャルネットワーク及びその他のインターネットソースにおける環境ニュース情報の使い方の多様性が、プラスチック廃棄物排出への抑制対策に対する国民の支持及びプグリーン行動に如何に影響を及ぼすかを明らかにしたい。

 

アプローチ

ユーロバロメーターが欧州27カ国から収集した二次データを利用し、研究を進めていた。

 

結果

マルチレベル分析により、性別、年齢、政治的イデオロギー、リスク認知、そして最も重要な3種類のメディアソースにおける環境ニュースを利用する際のソースの多様性を含むいくつかの個人レベルの要因が、、参加者のプラスチック廃棄物排出への抑制対策に対する支持及びプグリーン行動とは、正の相関関係にあることが示された。さらに、いくつかの国レベルの変数がグリーン行動に与えた影響も明らかになった。

 

研究意義

プラスチック廃棄物の排出抑制へのサポートを評価する際、国民を動員するためには、国と個人の2つのレベルでの様々な要因を考慮する必要があることが分かった。そして、調査結果では、社会的認知理論の理論モデル拡張、特に国際比較研究においては、より多くの国レベルの要因が含まれているということを示唆している。

 

オリジナリティ/バリュー

本研究は、プラスチック廃棄物排出への抑制対策に対する国民の支持およびグリーン行動に影響を与える可能性のある要因への理解をふかめるのに大いに役立つものであると思われる。

 

キーワードニュース消費、メディア効果、プラスチック廃棄物、グリーン消費、社会的認知理論、リスク認知、マルチレベル分析

 

 

3. News exposure and Americans’ perceptions of China in 2019 and 2021

アメリカ人のニュース消費及び中国に対する見方(2019 年~2021 年)

 

Shuo Tang   Lars Willnat

 

https://doi.org/10.1515/omgc-2022-0067

 

研究目的

近年、中米関係は急激に悪化していると言われている。新型コロナウイルスの感染拡大と中米貿易戦争とが相まって、米国国民の中国に対するよりネガティブな認識を助長した。本研究では、2020 年の新型ロナウイルス大流行前後のアメリカ人のニュース消費量及びパーソナリティが、中国に対する一般的な認識にどのような影響を与えたかを分析し、さらに、それに基づいて、主要な国際事件がどのように人々の外国に対する認識に影響を与えるかを調査した。

 

研究デザイン・方法・アプローチ

本研究は、アメリカで2019  (N = 1311)2021  (N = 1237)2 回にわかって行われた全国オンライン調査のデータを基づき分析を行ったものである。どちらの調査も、回答者のメディアの使用状況、パーソナリティ及び中国に対する認識について調べたものであった。

 

研究結果

研究結果から見れば、アメリカ人の中国に対する認識は、主流ニュースメディアよりも、むしろ党派的メディアやソーシャルメディアからの影響をより大きく受けているように見られる。また、これらのメディアから受けた影響は2019年より2021年のほうが強く、中米関係における米メディアの与える影響がますます大きくなっていることも示している。さらに、本研究では、党派の所属やパーソナリティなどの特性もアメリカ人の中国に対する認識にも強い影響を与えていることも明らかになった。

 

実際的意味

本研究を通して、研究者は、外交問題に対する国民の認識を調べるための調査票を設計する際に、分析に適切な変数として、どのようなものが考えられるかを学ぶことができる。

 

社会的意味

この研究では、メディア効果とパーソナリティとの複雑な形で相互作用し、アメリカの国民が外交政策について無知なことはまったくないということを示している。

 

オリジナル性・研究価値

本研究では、新型コロナウイルス大流行の発生前後の2つの全国的な代表的サンプルを分析・比較を行い、パンデミックのような大規模で予測不可能な国際的出来事が世論にどのような影響を与えるかについて、示唆を提供した。さらに、中国のソーシャルメディアプラットフォームであるティックトック(TikTokが、アメリカ国民の中国に対する認識に与える影響についても検討した。

 

キーワード中国、メディア使用、パーソナリティ、アンケート、新型コロナウイルス大流行、中米貿易戦争

 

 

4. “We are only to Appear to be Fighting Corruption…We can’t even Bite”: Online Memetic Anti-corruption Discourse in the Ghanaian Media

「私たちは汚職と戦っているように見えるだけ...噛むことすらできない」ガーナメディアにおける反汚職オンラインミームディスクールについて

 

Michael Ofori, Felicity Dogbatse

 

https://doi.org/10.1515/OMGC.2023-0001

 

キーワードミーム、反汚職、ガーナメディア、視覚的修辞学、隠喩

 

研究目的

研究の目的は、ガーナの汚職事件を暴露し批判したりするためのツールとしてミームがどのように使われているかを探ることにある。ガーナのメディアは、ミームを用いて不健全な政府や社会の慣行を批判し、これらの問題に対処するための代替アプローチを提唱してきた。そこで、ガーナの反汚職ディスクールに貢献するミームの特質を探っていく。

 

デザイン・方法論・アプローチ

本研究では、ガーナテレビチャネルのTV3の「羅非魚漫画家達(Tilapia Da Cartoonist)」のフェイスブックホームページから5種類のメディアミームを意図的に収集し、視覚的修辞と隠喩分析の方法を用いて、ミームがガーナの汚職との戦いを揶揄しユーモアで表現するアプローチを検討し、政府の汚職行為に対する是正策を提案した。

 

研究結果

本研究では、ミームが汚職防止の中で重要な役割を果たしていることを明らかにした。具体的に、まず、ミームは汚職事件が一般市民に与える影響を示すことによって汚職事件を批判ししている。そして、ミームは、ガーナの反汚職エージェントや組織に対する抑圧、反汚職闘争に対する真のコミットメントの欠如を明らかにするものでもある。また、ミームは腐敗を暴露し批判すると同時に、汚職問題に対処するための実用的なアプローチも提供した。研究結果で最も重要なのは、ユーモアがミームの基本的な特徴であるということを明らかにしたところであるが、ガーナのメディアの文脈では、ミームのユーモアは伝えようとするメッセージの重みに影響を及ぼすことないということも明らかになった。

 

実践的意義

ミームは戦略的な宣伝ツールと日常のニュース報道をよく補完するのに適している。

 

社会的意義

メディアミームは、社会における複雑な社会政治的物語を生成、再生、発信、強化するための有効なメディアツールとして利用されることができる。これは、社会に社会的・政治的な影響を与える可能性がある。

 

オリジナリティ

本研究は、ミームの質的解釈を通じて、反汚職のメディアテキストとしてのミームを探求した最初の研究であり、ユーモアがミームの伝えるメッセージに与える影響を検証した最初の研究でもある。本研究では、研究の制限や提言も掲示し、関連研究への示唆をも図っている。

 

 

5. Online Communication Studies in Brazil: Origins and State of the Art

ブラジルにおけるオンラインコミュニケーション研究:その起源と現状

 

Afonso de Albuquerque, Raquel RecueroMarcelo, Alves dos Santos Junior

 

https://doi.org/10.1515/OMGC.2022.0068

 

要旨本論では、ブラジルにおけるオンラインメディア研究およびオンライン上の政治コミュニケーション研究の起源と発展について論じる。また、ブラジルのオンラインメディア研究の起源と発展に影響を及ぼしている要因についても分析する。一方では、ブラジルは国際研究システムの半周辺に属しており、他方では、オンラインメディアが登場したとき、ブラジルにはすでにコミュニケーション研究をめぐる確固たる伝統を持っていたという。本論は、ブラジルのコミュニケーション教育と研究がどのように組織されてきたかを概観し、さらに、それを踏まえ、ブラジルにおけるオンラインメディア研究の発展を、a)初期段階、b)統合段階、c)新領域段階という3つの段階に分けて紹介する。特に、オンラインメディアがブラジルの政治コミュニケーション研究のアジェンダに与えた影響について考察する。

 

キーワード:オンラインメディア、ブラジル、政治コミュニケーション、ネットワーク分析

 

 

6. The “computational turn”: an “interdisciplinary turn”? A systematic review of text as data approaches in journalism studies

「計算的転回」は「学際的転回」なのか? --- ジャーナリズム研究におけるテキストデータ分析手法に関するシステマティック・レビュー

 

Valerie Hase, Daniela Mahl and Mike S. Schäfer

 

https://doi.org/10.1515/omgc-2023-0003

 

要旨ジャーナリズム研究において自動コンテンツ分析を適用する可能性としては、例えば、機械学習によるジャーナリズム報道の主旨の判断や、自動アプローチによるニュース拡散の測定などが挙げられる。しかし、これまで計算機による手法はどのように応用されてきたのだろうか。また、コミュニケーション科学における「計算的転回」は、特に学際的研究に対してどのような結果をもたらすのだろうか、あきらかにするべきだと思われる。ゆえに、本稿では、系統的な文献レビューを実施し、ジャーナリズム研究における自動コンテンツ分析の利用を要約する。その結果、コミュニケーション科学において方法論的研究の学際性増加のもう一つの指標として、コミュニケーション科学者によるこの手法の利用が増加していることが明らかになった。しかし、理論的研究においても学際性が高まっているようなことを示す証拠はほとんどなかった。つまり、計算科学的手法に依拠した研究において、他の学問分野の理論に言及することは増えていないといえる。一方、実践的分野における学際性についても、たとえば共同研究においても、私たちの学問分野が学際的になっているわけではなく、むしろ、技術的な学問分野が有利になるように変化しています。少なくともこれまでのところ、コミュニケーション科学における「計算的転回」は、「学際的転回」と同一視されるべきではないと言わざるを得ないだろう。

 

キーワード計算社会科学、計算コミュニケーション科学、計算手法、自動コンテンツ分析、学際性、ジャーナリズム学